業務中に,アルブミンが高値となって薬物変更がなされたのを目撃してしまいました。
アルブミンが高値となる理由は学校でも習った記憶がなかったため、今回記事を書くに至りました。
基本的な内容を書いていこうかと思います。
Contents
アルブミンの概要
アルブミンは血漿の総蛋白のうち組成として大半(50~70%)をしめる蛋白です。
検査としてはスクリーニング検査として有用であり,栄養状態や肝臓での蛋白合成能の指標となります。
ネフローゼ症候群や栄養障害,肝臓疾患などを疑う場合にも有用です。
そして,アルブミンの産生の割合(14~15g/day)は栄養状態(特にアミノ酸欠乏)の程度に依存します。
アルブミンの半減期は約20日とされています。
基準値
アルブミンの基準値は3.9~4.9g/dLとされています。
測定の意義等
①アルブミンには膠質浸透圧を維持する働きがあるため,低アルブミン血症の場合には浮腫を起こします。
→体に浮腫が見られた場合の原因を考えるために測定されます。
②低カルシウム血症を認める場合,真のカルシウム低下なのか見かけ上のカルシウム低下かを鑑別するためにアルブミンの測定を行います。
血液中のカルシウムは3つの形で循環しています。
①イオン型カルシウム(50%):実質の生理的活性を持っている形
②タンパク質結合(40%)型:主にアルブミンに結合
③その他のものと複合体を形成:クエン酸やリン酸塩等と形成
脱水などにより,血漿タンパク質濃度が増加すると
タンパク質結合型カルシウムと総血清カルシウムは増加します。
同じ原理で血漿タンパク質が減少するような状況ではCa²⁺は正常範囲に維持されていますが
タンパク質結合型Caと総結成Caは低下しています。
これを読んでわかることとして,
血清Ca²⁺濃度は正常だが,アルブミン濃度によって総血清カルシウム濃度が変わる
という状況が発生しています。
これに対して臨床検査では補正カルシウムという考え方が適用され、この算出の際にアルブミン濃度やアルブミン重量が使用されます。
③炎症時には肝臓でのアルブミン合成は低下しているため,そういうことも考慮します
④腎の網目が破壊されていたり(ネフローゼ症候群),消化管からの漏出(蛋白漏出性胃腸症)によってもアルブミンは喪失します
⑤様々な要因は考慮しないといけませんが,
長期間(約20日)の栄養状態を含めた健康状態の指標として有用です。
アルブミンの主な機能や臨床的意義
すこし上記と重複しますが…
機能
アルブミンの機能として
腸肝循環された胆汁と結合して運搬する機能
コルチゾール(グルココルチコイド)の不活性化に寄与(生理活性があるのはタンパク質に結合していない遊離型のみ)
脂肪酸の運搬
膠質浸透圧を維持する機能
薬物を蛋白結合させる機能
等があります
意義
肝機能・栄養状態の指標となる(肝臓で合成される,また半減期は20日のため,その期間の栄養状態の指標ともなる)
水分量の指標(濃度は水分量にも依存するため,脱水なら濃度は高まり,水過剰なら濃度は減少)
等です。
異常値が出る原因
基本的に高値にはなることは少ないです。
高値
脱水→水分摂取不足,下痢や嘔吐などが考えられます
低値
体外喪失
ネフローゼ症候群(尿中に喪失)
蛋白漏出性胃腸症(糞便に喪失)
素材の不足
栄養失調
吸収不良症候群
等があります。
合成障害
肝硬変や慢性肝炎等では肝臓でのアルブミン合成能力が低下していると考えられます。
蛋白分解更新
重症感染症や甲状腺機能亢進症等では分解が進み,低値となることがあります。
合わせて考える他の検査
腎機能の評価
尿検査やクレアチニンの測定(ネフローゼ症候群・腎疾患の鑑別等)
肝臓合成能
ASTやALT,γ-GTPやコリンエステラーゼ,血小板数等
栄養状態
より短期間の栄養状態を反映する蛋白としてトランスサイチレンがあります
M蛋白
総蛋白が高値であり,アルブミンが低値である場合にはγグロブリンの以上が疑われるため,各抗体(IgG,IgA,IgM)のを測定等が必要です。
補足
アルブミンが高値を示す場合にはヘマトクリットやBUN,eGFR等を測定して脱水状態になっていないかどうかを確認しましょう(どうでもいいですが,私がこの記事を書いた理由が実はこれです)
最後に
この記事は筆者が個人的な実用メモとして利用したり
他者の理解の参考になるようにと作成したものです。
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※コメントを許可していない記事もあります