薬剤師会の会報雑誌を家においているのですが、どこかに情報を残しておかないと
捨てようにも捨てられないので記事を書きました。
やっつけで書いているので、裏はとっていません。(時間ができたら色々調べて書きます)
会報の中身で、使えそうな部分を載せた感じです。
一応ガイドラインは見ながら書いていますが、いつものような薬剤個々レベルでの考察はしてないです。
Contents
アトピー性皮膚炎 | 各論
アトピー性皮膚炎の定義はこのように記載されています。
増悪と軽快を繰り返す瘙痒の ある湿疹を主病変とする疾患であり,患者の多くは「ア トピー素因*」を持つ.
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018
アトピー素因とは
家族歴や既往歴、IgE抗体を産生しやすい素因を指します。
1家族歴・既往歴(気管支喘息,アレルギー性鼻炎, 結膜炎,アトピー性皮膚炎のうちいずれか,あるいは 複数の疾患),または2 IgE 抗体を産生しやすい素因. アトピー性皮膚炎の定義ではアレルギーの存在は必須 ではない.これは診断においてアレルギーの証明が必 須となるアレルギー性鼻炎などとは異なる14).家族歴, 既往歴では蕁麻疹を考慮しない.IgE 抗体を産生しや すい素因は血中総 IgE 値とアレルゲン特異的 IgE 抗体 価を考慮する.総 IgE 値は皮膚炎の活動性に応じて上 昇するため,軽症では低値のことが多い.軽症の場合 はアレルゲン特異的 IgE 抗体価が参考になる.
アレルギー性皮膚炎診療ガイドライン2018
アトピー性皮膚炎の病態
アトピー性皮膚炎は3つの病態が要因で生じるとされています。
皮膚バリア機能低下のために
- 汗や洗浄剤のすすぎ残しなどの非特異的な刺激に反応して皮膚炎を起こしやすいこと
- バリア機能が低下した皮膚を通じた様々なアレルゲンへの感作に続くアレルギー炎症が生じる
- 皮膚の乾燥や皮膚炎が掻痒を起こすこと
アトピー性皮膚炎の患者の皮膚では、保湿因子(水分を保つセラミド、天然保湿因子:フィラグリンの分解物)が低下しているためにバリア機能が低下しています。なので刺激によって皮膚炎を起こしやすいです。
皮膚のかゆみには、ケミカルメディエーター、インターロイキン等が関わります。
アトピー性皮膚炎の薬物治療で大事なことは、悪化因子をへらすことです。
アトピー性皮膚炎は遺伝的素因も含んだ多病因性の 疾患であり,疾患そのものを完治させうる治療法はな い.したがって,薬物療法は対症療法を行うことが原 則である.しかし,病変部では,皮膚の炎症による表 皮バリア機能のさらなる低下や被刺激性の亢進,搔破 行為の刺激などによって,湿疹がますます悪化する悪 循環が生じうるため,薬物療法で炎症を制御すること は,アトピー性皮膚炎の悪化因子を減らすことにもな る.
アトピー性皮膚炎診療GD2018
アトピー性皮膚炎の治療の意義
アトピー性皮膚炎の治療方針で大事なことは、
- 薬物療法
- 生理学異常に対する外用療法とスキンケア
- 悪化因子の対策、検索
とされています。
先程にも挙げた薬物治療の意義は説明する必要があります。
(症状を抑えるだけではなくて悪化因子に対する対策も兼ねていること)
治療目標
治療の目標として、
「症状がないか、状態がほぼ良くなっていること。または生活に支障が出ないようにコントロールすること」としています。
治療の最終目標(ゴール)は,症状がないか,あっ ても軽微で,日常生活に支障がなく,薬物療法もあま り必要としない状態に到達し,それを維持することで ある.また,このレベルに到達しない場合でも,症状 が軽微ないし軽度で,日常生活に支障をきたすような 急な悪化がおこらない状態を維持することを目標とす る.
薬物療法
ステロイドやタクロリムス、プロアクティブ療法、抗ヒスタミン薬、シクロスポリン、漢方等があります。
ステロイドとタクロリムスは使用経験が豊富で、有効性と安全性が高いと言われています
3.3 薬物療法(1)抗炎症外用薬現時点において,アトピー性皮膚炎の炎症を十分に 鎮静するための薬剤で,有効性と安全性が多くの臨床 研究で検討されている薬剤は,ステロイド外用薬とタ クロリムス軟膏(topical calcineurin inhibitor;カルシ ニューリン阻害外用薬)である
アトピー性皮膚炎診療GD2018
ステロイド
ステロイドは部位や症状を考慮して適切なランクを選択します。
特に苔癬化した紅斑等の症状には強めのステロイド外用薬が使用されます。
基本の塗布部位
顔面や頸部、外陰部のように皮膚が薄くて薬剤の吸収率の高い部位にはミディアムクラス以下を用います。
治療の基本剤形としては軟膏を選択することが多い(乾燥しているから?)
ですが、夏場では使用感を優先してクリームを選択することもよくあります。
痒疹や苔癬化皮疹ではテープ剤が選択されたりします。
症状が良くなってきたらランクを下げることも考慮
ある程度病変部位がよくなってきたら、外用回数の漸減、低ランクステロイドやタクロリムスへ移行させます。
乳幼児や小児では副作用が出やすいので、診察回数等を大人より多めにして状態を確認することが大切です。
特に乳幼児,小児において,年齢によってランクを 下げる必要はないが,短期間で効果が表れやすいので 使用期間に注意する
指導など | ステロイド
今回は、そういう記事ではないので薬剤個々の指導内容自体は記載しませんが一般的に言っておいたほうが良いかなという内容を紹介します
ステロイド外用薬に対する誤解(ステロイド内服薬 の副作用との混同,およびアトピー性皮膚炎そのもの の悪化とステロイド外用薬の副作用との混同が多い) から,ステロイド外用薬への必要以上の恐怖感,忌避 が生じ,アドヒアランスの低下によって期待した治療 効果が得られない例がしばしばみられる.また不適切 な使用により,効果を実感できないことでステロイド 外用薬に対する不信感を抱く事もある.その誤解を解くためには十分な診察時間をかけて説明し指導するこ とが必要である.小児においても過少外用により症状 が遷延しないように注意する必要があり,保護者の理 解が得られるように十分に説明指導を行っていく
また、ステロイド外用薬によって炎症が軽快したあとに生じる色素沈着をステロイド外用薬によるものと考える1)こともあります。
また塗る量は1FTUの説明に加えて、皮膚がしっとりする程度の量orティッシュペーパーがはり付く程度等といった説明も有効と思われます1)
タクロリムス外用
カルシニューリンを阻害する作用機序を持ちます。
2~15歳で使用する小児用0.03%の商品と、16歳以上で使用する0.1%軟膏があります。
また、体重によって使用量の制限もあります(添付文書)
これはステロイド外用薬を長期連用したときに見られやすい皮膚萎縮の副作用がみられない1)
ので、顔や頸部のように皮膚が薄くてステロイド外用薬の副作用が懸念される部位の皮疹に特に有効とされています1)
仕様初期では外用部位に刺激感やほてり感が見られることが多いですが、皮疹の改善と共に数日〜1週間で改善することが多いので予め説明しておくことが大切1)とされています
プロアクティブ療法
アトピー性皮膚炎への外用療法の基本は、ステロイドやタクロリムスを使用して、湿疹が警戒したあたりでそれらの抗炎症外用薬を保湿外用薬に切り替えて、再燃を予防して寛解状態を維持することです1)
急性期の症状が寛解したあとに、抗炎症外用薬を週2回程度にまで減らして、保湿外用剤を使用する方法をプロアクティブ療法といいます。
プロアクティブ(proactive)療法は,再燃を繰り返 す皮疹に対して,急性期の治療によって寛解導入した 後に,保湿外用薬によるスキンケアに加え,ステロイ ド外用薬やタクロリムス軟膏を間歇的に(週 2 回など) 塗布し,寛解状態を維持する治療法である(CQ8:推 奨度 2,エビデンスレベル:A).それに対し,炎症が 再燃した時にのみ抗炎症外用薬を使って炎症をコント ロールする方法をリアクティブ(reactive)療法とい う(図 29).
推奨文:プロアクティブ療法は,湿疹病変の寛解維 持に有用かつ比較的安全性の高い治療法である. 推奨度:2,エビデンスレベル:A 解説:プロアクティブ療法は,急性期の治療で炎症 のない状態にまで改善した皮膚に,ステロイド外用剤 やタクロリムス外用剤を週 2 回程度塗布し,皮膚炎の 再燃を予防する治療法で,再燃回数を減らす方策とし て行われることが増えている.11 件の RCT289)~299)と 1 件のシステマティックレビュー98)において,プロアク ティブ療法が寛解維持に有用であることが示されてお り,エビデンスレベルは A である.プロアクティブ療 法は,ステロイド外用剤,タクロリムス外用剤を問わ ず,皮疹の再燃予防には有用である.安全性に関して も,ステロイドは 16 週間,タクロリムスは 1 年間まで の観察期間においては,多くの報告が基剤の外用と比 べて有害事象の優位な差は無いとしており,比較的安 全性の高い治療法であると考えられる.ただし,プロ アクティブ療法の安全性について,それ以上の期間で の検討がなされておらず,副作用の発現については注 意深い観察が必要である.また,皮膚炎が十分に改善 していない症例に対する治療法ではないことにも注意 しなくてはならない.さらに,必要塗布範囲,連日投 与から間歇塗布への移行時期,終了時期等については 個々の症例に応じた対応が必要であるため,アトピー 性皮膚炎患者の皮膚症状の評価に精通した医師による 治療,あるいは皮膚症状の評価に精通した医師と連携 した治療が望ましい.
アトピー性皮膚炎診察ガイドライン2018
H1受容体拮抗薬
かゆみを和らげる効果が期待され、抗炎症外用療法の補助として推奨されます。
一部の RCT では皮膚症状の改 善効果,ステロイド外用薬の減量や薬効ランクを下げ る効果,sIL-2R および TARC 値が改善した結果など も示されており,抗ヒスタミン薬の使用はアトピー性 皮膚炎における抗炎症外用療法の補助療法として推奨 される(CQ7:推奨度 1,エビデンスレベル B).これ まで抗ヒスタミン薬単剤でアトピー性皮膚炎を治療し た場合の効果に関しては信頼できるエビデンスが存在 せず,抗炎症外用薬を使用することなく抗ヒスタミン 薬のみで治療することは推奨されない.
シクロスポリン
ひどい症状に使用されるという立ち位置です。
シクロスポリンは欧米の多くの国でアトピー性皮膚 炎に対する有効性が示され130),アトピー性皮膚炎に対 する使用が承認されている(CQ12:推奨度 2,エビデ ンスレベル:A).本邦では 2008 年 10 月よりアトピー 性皮膚炎に対する適応が追加されたが,その適応とな るのは 16 歳以上で既存治療で十分な効果が得られな い最重症(強い炎症所見を伴う皮疹が体表面積の 30% 以上にみられる)の患者である131). 具体的には,顔面の難治性紅斑や紅皮症などにも有 効で,投与後速やかに痒みが軽快することから,痒疹 結節が多発し搔破の著しい患者の QOL の改善にも有 用である.3 mg/kg/日を開始用量とし,症状により 5 mg/kg/日を超えないよう適宜増減し,8~12 週間で 終了する.使用中は腎障害や高血圧,感染症などに注 意し定期的に薬剤血中濃度(トラフ値)を測定する. 長期使用での安全性が確立していないことから,症状 が軽快した後は速やかに一般的な外用治療に切り替え ることが重要である.長期投与が必要な場合は 2 週間 以上の休薬期間をはさむ間歇投与とする. シクロスポリンの内服方法は 1 日 2 回の食後内服と されているが,乾癬の患者における薬物動態の研究で は 1 日 1 回および食前の内服の方が,それぞれ高い血 中濃度が得られることから132),1 日 2 回の食後の内服 より 1 日 1 回食前の内服の方が高い治療効果が得られ ると考えられる.
だいたいこんな感じです。
またそのうち追加します
1)日本薬剤師会雑誌 vol.72 4月