
大腸がんにはFOLFIRI療法を基盤とした療法が色々ありますが、まずはここで
FOLFIRI療法を基礎として説明します。
引用は示しておくので、各自整合性を確認してからご使用ください
(人間が書いてるので、打ち間違い等がある可能性は0ではありませんので)
FOLFIRI療法|服薬指導や生活指導の考え方
レボホリナート(ロイコボリン≒l-LV)
フルオロウラシル(5-FU)
イリノテカン(CPT-11)の3剤併用療法1)です。
上記の薬剤の各論としての話はリンク先に書いてますので、ご一読してから読んだほうが理解が深まると思われます。
FOLFOXは、薬剤としては
FOLFIRIのイリノテカンをオキサリプラチンに置き換えた療法になります。
レジメンとしての使用薬剤
注射抗がん剤および支持療法:Day1 | |||
グラニセトロン デキサメタゾン 生理食塩液 |
静注 | 1mg 6.6mg 50mL |
15分 |
レボホリナート 5%ブドウ糖液 |
静注 | 200mg/m² 250mL |
120分 |
イリノテカン 5%ブドウ糖液 |
静注 | 150mg/m² 250mL |
90分(レボホリナートと同時に投与開始) |
フルオロウラシル 生理食塩液 |
急速静注 | 400mg/m² 50mL |
ワンショット |
フルオロウラシル 生理食塩液 |
持続静注 | 2400mg/m² 適量 |
46時間持続 |
経口制吐剤:Day2~3 | |||
デキサメタゾン※1 |
経口 | 8mg | 分2(朝、昼)、day2,3 |
※1デキサメタゾン
(比較的嘔気・嘔吐を伴うことも多く、アプレピタントを併用することも考慮してもよいが、併用時にはデキサメタゾンの量を減らす)
投与サイクル | 2週毎に投与 | サイクル数 | - |
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【参考文献】 | J Clin Oncol.22(2):229-37(2004). |
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このレジメンの主な副作用
発熱性好中球減少症 | 7% |
好中球減少(Grade≧3) | 24% |
貧血(Grade≧3) | 3% |
下痢(Grade≧3) | 14% |
悪心(Grade≧3) | 13% |
嘔吐(Grade≧3) | 10% |
粘膜炎(Grade≧3) | 10% |
疲労(Grade≧3) | 4% |
脱毛(All Grade) | 60% |
各薬剤の主な副作用 | |
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5-FU | 食欲不振、下痢、口内炎 骨髄抑制、心筋虚血、白質脳症 |
CPT-11 | 骨髄抑制、下痢、悪心、嘔吐 食欲不振、間質性肺炎 |
【参考文献】 | 国立がん研究センター内科レジデント編,がん診療レジデントマニュアル,2013,医学書院(一部改変) |
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特徴
レジメンの推測方法をご紹介します。
催吐リスクは中等度
FOLFIRIの催吐リスクは中等度に分類されるため、支持療法の処方箋から推測することができます。
結論を言えば、デキサメタゾン4mg,アプレピタント,5-HT3拮抗薬,半夏瀉心湯が推測の鍵になります
ヒント1 | 中等度の催吐リスクの支持療法
がん診療ガイドラインから、どのような処方箋が来るのかを確認してみましょう。

1day目の支持療法は病院で受けてくるはずなので、
薬局で処方を受けるパターンとしては
アプレピタント80mgを2日分(ホスアプレピタント投与では処方がないことも)
5-HT3受容体拮抗薬
デキサメタゾン4mg
投与する処方が考えられます。
補足
イリノテカンは中等度催吐リスクの中でも吐き気は強い方のため
5-HT3拮抗薬+デキサメタゾン4mg+アプレピタント80mg
という処方が出るであろうことが考えられます。(一部減らすことも有り得ますが)
(高度催吐リスクのレジメンならデキサメタゾンがたいてい8mgくらいの量で来るはずです)
ヒント2 | 半夏瀉心湯
イリノテカンの記事でも説明したように、遅発性下痢の予防として半夏瀉心湯が有効です。
半夏瀉心湯は口内炎予防で用いられる可能性もありますが、ここまで(半夏瀉心湯も含めて)条件が揃っていたらイリノテカンが入っているレジメンの可能性が高いと考えられます筆
ヒント3 | ロペラミド
ロペラミドはASCOの下痢の治療に関するガイドラインにおいて
「下痢のグレード1,2において合併症(腹痛、悪心・嘔吐、PSの低下、発熱、敗血症、好中球減少、出血傾向、脱水) がない場合にはロペラミド4mg開始して、その後4時間おきに(or下痢が起こるたび)に2mg追加する、1日最大16mgまで」という投与方法の推奨があります。
これと全く同じ投与方法か、それとも少し異なる方法なのかはそのDrによって考えが変わるところではありますが、ロペラミドは推奨されているようです。

癌治療に伴う下痢治療のガイドラインに関しては海外の報告があり3, 4)、grade 1/2で、危険因子 (腹痛、悪心・嘔吐、PSの低下、発熱、敗血症、好中球減少、出血傾向、脱水) がない場合はロペラミドの投与を推奨している (図2)。また、ロペラミドを投与しても48時間以内に下痢が改善しない場合、危険因子がある場合、grade 3以上の下痢の場合はオクトレオチドの投与を推奨している。
https://www.gi-cancer.net/gi/fukusayo/fukusayo_04_2.htmlより引用
指導 | 生活指導等
化学療法治療の基本ではありますが。
手洗いうがい
免疫を抑える可能性があるので、当然です。
水分補給
遅発性下痢は約1週間〜くらいからみられることが多いです。
脱水にならないように、こまめに水分摂取はするように忠告しましょう
食事
サワイオンコロジーサイトに良さそうなものがあったのでご紹介します。
食べても問題ない・食べたほうが良い食材
食欲があるなら消化に良いものややわらかいものがオススメです
お粥、うどん
卵、豆腐、鶏肉、白身魚
リンゴ、バナナ、桃
汁物(味噌汁、野菜スープなど)
https://med.sawai.co.jp/oncology/advice/vol_06.html
避けた方が良い料理・食材の例
刺激の強いものは避けたほうが無難でしょう
食物繊維が多く硬いもの(ごぼう、れんこんなどの根菜類)
油っぽいもの(脂身の多い肉など)、揚げ物
甘みの強いもの(ノンシュガーのものも含む)
酸味の強いもの(パイナップル、柑橘系の果物)
乳製品
ガスの出やすいもの(炭酸飲料、芋類など)
刺激物(香辛料、アルコール、カフェイン飲料)
Drに副作用を伝えるときは一番重かった症状を言う
診察受けているときの症状では、(症状が治まっている可能性があるため)グレードを軽く判断されてしまう可能性があります。
そのため、治療期間中で最も重かった症状を伝えるように指導するべきと考えられます筆
アプレピタントは2日目以降は午前中に飲むのが基本
半減期は約10時間程度なので24時間後だと1/4より少し少ないくらいでそこそこ血中に残っていますが、あくまでも吐き気が出ないようにという意図のため、ある程度血中濃度を保ちたいのだろうと考えられます筆
本剤は、抗悪性腫瘍剤の投与 1 時間~1 時間 30 分前に投 与し、2 日目以降は午前中に投与すること
アプレピタント添付文書
経口投与した際の本剤の血漿中濃度推移から、本剤の投与は抗悪性腫瘍剤の投与 1 時間〜1 時間 30 分前に行うことが望ましいと考えられた。また、2 日目以降は初日のおよそ 24 時間 後の投与となるようにした。
https://www.info.pmda.go.jp/go/interview/1/180188_2391008M1021_1_009_1F.pdf
ワルファリンの効果が減弱する
CYP2C9 誘導作用を持つため、2C9で代謝される薬剤の血中濃度が減少する場合があります。。
長期ワルファリン療法を施行している患者には、がん化 学療法の各コースにおける本剤処方の開始から 2 週間、特 に 7 日目から 10 日目には、患者の血液凝固状態に関して綿密なモニタリングを行うこと。[10.2、16.7.7 参照] アプレピタント添付文書
終わりに
この記事は筆者が個人的な実用メモとして利用したり
他者の理解の参考になるようにと作成したものです。
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