発症機序を検索してもあんまりブログには書いてないですね。

「甘草→偽アルドステロン症」みたいな感じで、作用機序をすっ飛ばしてるブログが多いなと思いましたので、自身の復習も兼ねて記載しました。

偽アルドステロン症発症の機序|症状・対応

この記事で学べる内容

この記事で学べる内容

①アルドステロンの基礎的な内容(合成・具体的な作用)

②偽アルドステロン症の要素
(アルドステロンコルチゾールコルチゾン)

③偽アルドステロン症の原因となる酵素(11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2型 )

グリチルリチン酸の関わり方

アルドステロンとは

アルドステロンについては、このリンク先にありますので、基礎的な内容は読んでおいてください。

合成について

アルドステロン
イラストレイテッド生理学p494
アルドステロン
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/97/9/97_2150/_pdfより
ステロイドホルモン合成
イラストレイテッド生理学p495

ポイント

①アルドステロンもコルチゾールも、鉱質コルチコイド受容体に結合する
②鉱質コルチコイド受容体(MR)が活性化すると、Na⁺再吸収、K⁺排泄の方向に進む
③コルチゾールはコルチゾンに変換されるが、コルチゾンは鉱質コルチコイド作用はない(不活性と考える)
④普段はコルチゾールをコルチゾンに変換することによって、Na⁺やK⁺の調節を行う
④のバランスが崩れると、MR受容体(+)が優位になる。

アルドステロンとコルチゾールはMRに対する結合能は同程度ですが、コルチゾールの方が大量に存在するため、コルチゾールの調節が重要となります。つまり11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2型の発現が重要ということになります。

偽性アルドステロン症

これらを踏まえた上で、グリチルリチンの作用を見ましょう

11βHSD2(11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2型 )阻害作用

グリチルリチンは抗炎症作用を持ちますが、偽アルドステロン症にはほぼ寄与しないと考えられます。

ここで考える必要があるのは、グリチルリチンは副腎皮質ステロイドに類似した構造を持っているということです。
結論を言うと、グリチルリチン・カルベノキソロン(グリチルリチン酸の誘導体)はコルチゾールをコルチゾンへと変換する酵素(11βHSD2)を可逆的に阻害します1)

偽性アルドステロン症
偽性アルドステロン症 より

本来ならコルチゾールとコルチゾン、アルドステロンで調節されていたMRですが、
コルチゾールが増加しすぎてMR刺激が優位となり、
転写促進→ENaCやNa⁺,K⁺-ATPase等の発現を増加させ、偽アルドステロン症(アルドステロンが原因ではないけどアルドステロン症っぽい症状を呈する)を発症することになります。

血中アルドステロン濃度は低値を示すというのが特徴です。

グリチルリチンの鉱質コルチコイド作用は弱いため、甘草やグリチルリチン酸が直接、偽アルドステロン症を起こすわけではないということに注意が必要ですね。

症状

尿細管のNa⁺吸収増大・K⁺排泄増大による症状です。

高血圧、低カリウム血症、代謝性アルカローシス、四肢の脱力、筋肉痛、。けいれん(こむら返り), 頭重感,全身倦怠感,浮腫,口渇,動悸,悪心, 嘔吐などを生じます。重症では歩行困難,四肢麻痺 発作,意識消失等です2)
検査では血漿アルドステロン濃度は低値を示します。(アルドステロンが原因ではないことを踏まえるとイメージがわくかとおもいます)

初期症状では、四肢の脱力やむくみがわかりやすいかなと思われます。

治療薬

基本は推定原因薬剤の中止といわれています。
低カリウム血症に対してカリウム製剤を投与することもあるようですが、鉱質コルチコイド作用の過剰亢進のため、結局尿中へカリウムが排泄されるだけで効果は見込めないようです。

治療薬としては

①アルドステロン受容体拮抗薬であるスピロノラクトン(第一選択)

②アルドステロンその他鉱質コルチコイドを拮抗するトリアムテレン
遠位尿細管のNa⁺、水の排泄を促進して、カリウムの排泄を抑制します。

③鉱質コルチコイド受容体に結合してRAA系のアルドステロンを阻害するエプレレノン

が治療候補とされています3)

これからはエサキセレノン(エプレレノンの次世代MRブロッカー)も治療候補に入ってくる可能性もあると思います。

その他

甘草は国内では食品添加物等(醤油とかふりかけとか)に使用されていて、ほとんどの人々が摂取しているはずです。ベースとして甘草を摂取しているため、少量の甘草でも偽アルドステロン症を注意しろというのはそういう意味のメッセージなのかもしれません。(邪推)

また、ループ利尿薬も同酵素を阻害する可能性が示唆されているため、リスク要因になるのかもしれません2)

が、実際に起こる頻度はめったに起こらないので、初期症状の説明等にとどめておくのが現実的でしょう

1)偽性アルドステロン症
2)偽アルドステロン症の重症副作用への疾患別対応
3)薬物治療学改訂3版p382

以上です。

追加したほうが良いかもしれない内容とかあればSNSとかにジャンプしてもらえるとやるかもしれません。右から飛べると思います。

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