問い合わせてみた

今回は”薬がみえる”という書籍を出版してるところにメールで問い合わせてみました。

問い合わせ内容と回答

【お問い合わせ内容】
薬がみえる書籍のp210についての質問です。
グレープジュースは腸のCYP3A4に影響するとのことですが、
腸のに存在する3A4に代謝される基質と、肝臓の3A4で代謝される基質は同一でしょうか?

例えば、リピトールの添付文書(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/671450_2189015F1023_2_01)
にの相互作用において
「10. 相互作用 本剤は、主として肝の薬物代謝酵素CYP3A4により代謝される。ま た、P-糖 蛋 白 質(P-gp)、
乳 癌 耐 性 蛋 白(BCRP)、 有 機 ア ニ オ ン トランスポーター(OATP)1B1/1B3の基質である。」
と、記載されており、

わざわざ「主として肝の3A4で代謝」と書いてあるので腸の3A4で代謝される基質とはまた別なのか?
という疑問を抱いたので質問させていただいております。

よろしくおねがいします。

このように質問をしたところ,以下のように返事がありました。

平素より弊社コンテンツをご利用いただき誠にありがとうございます。
出版社メディックメディア編集部でございます。

このたびはお問い合わせいただきありがとうございました。
『薬がみえるvol.4』に関して
お寄せいただいたご質問にお答えいたします。

【回答】
あくまで弊社の見解になりますが、
腸に存在するCYP3A4と肝臓に存在するCYP3A4が代謝する基質は同一であると考えております。
ただし、経口薬であれば腸と肝臓の両方のCYP3A4により代謝され、
注射薬であれば肝臓のCYP3A4により代謝される、というように、
投与経路による違いはあると考えております。

まず、私共が探した限りでは、
CYP3A4の基質を腸と肝臓で区別している文献は見つけられませんでした。
また、小腸および肝臓のCYP3A4のcDNAの塩基配列が等しく、同一のCYP3A4タンパクが発現している可能性が示唆されているとの報告があるようです(参考資料㈰)。
同一のCYP3A4タンパクであれば、基質となる薬物も同一と思われます。

ですが、経口薬以外の医薬品(注射薬など)については、小腸における代謝はほぼ影響がないと思われますので、
CYP3A4の基質の内、注射投与される薬物については、
「腸に存在するCYP3A4の基質にはならない」といえると思います。
(in vitroで、小腸より抽出したCYP3A4と合わせると、そのような薬物でも代謝されるとは思いますが)

また、経口薬であっても、薬物によって小腸におけるCYPの影響の大きさが異なり、
これが薬物相互作用に関わることがあるため
学生向けの書籍において、消化管のCYP3A4に関する相互作用と、肝臓のCYP3A4に関する相互作用が
区別して記載されることはございます(参考資料㈪)。

例示していただきましたリピトールについては、
添付文書においては「主として肝の薬物代謝酵素CYP3A4により代謝される」と記載されておりますが、
インタビューフォームにおいては
「アトルバスタチンはヒト肝及び小腸ミクロソームで代謝され」と記載されております(参考資料㈫)。
また、具体的な機序までは記載されておりませんが、添付文書に
「グレープフルーツジュース1.2L/日との併用により、本剤のAUC0-72hが約2.5倍に上昇したと
の報告がある。」とあります。
一般に、小腸よりも肝臓の方がCYPの存在量が多い(参考資料㈰)ため、
リピトールのメインの代謝の場は肝臓であるものの、
小腸においても、グレープフルーツジュースによりCYP3A4阻害されるとAUCに影響が及ぶ程度には関わっていると思われます。

なお、余談になりますが、繰り返しグレープフルーツジュースを服用することで、
小腸だけでなく肝臓のCYP3A4も阻害されるとの報告があるようです
(参考資料㈬およびhttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11009051/)。
こちらの報告は、『薬がみえる』シリーズのメインターゲットである初学者には発展的すぎると判断したため、
『薬がみえるvol.4』内には記載しておりませんが、
注射投与されるCYP3A4基質薬のように、小腸のCYP3A4が代謝に関与しないものであっても、
グレープフルーツジュースの服用量・頻度によっては、影響を受ける可能性はあると考えられます。

次回改訂時、より誤解のない記載にできないか検討させていただきます。
貴重なご意見をお寄せいただき、ありがとうございました。

結論

筆者の結論としては
小腸のCYP3A4で代謝される基質と
肝臓に存在するCYP3A4で代謝される基質は同じと考えられます。

理由は小腸に存在するCYP3A4と
肝臓に存在するCYP3A4のDNA塩基配列が同じではないかと考えられているからです。
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/dmpk1986/15/2/15_2_159/_pdf)より。
※表現としては”同じタンパクが発現している可能性が示唆されている”という書き方です。

また,頂いた回答に記載されていたパブメドの文献から
半減期も延長されていたと記載されていたことももう一つの根拠とさせていただいています。
半減期も延長するということは代謝又は排泄に影響が出ていると考えられますので
肝臓のCYP3A4にも影響が与えられている
と考えられます。
(各論としての内容からグレープフルーツジュースで排泄遅延は考えにくいです)
このことからも基質は同じだろうと私は考えています。

蛇足ですが、個人的にはフラノクマリン類が吸収されて肝臓まで行ってるんじゃないのか?と思っています。
(個人的な考えです)

例のグレープフルーツジュースの試験においては3日間の投与で半減期の延長が観察されていることから
肝の3A4で代謝される薬を服用している患者に対してグレープフルーツジュースの摂取を控えると説明するのも
現実的な話と考えられるのではないでしょうか。

ちなみにpubmedの件では,トリアゾラムの半減期が約50%程度伸びてました。

補足として,リピトールのインタビューフォームでは小腸ミクロソームでも代謝されると記載されているようなので
そういった記載もグレープフルーツジュース飲用の是非について評価する要因になるのではないでしょうか。

今回の話は以上です。

最後に

この記事は筆者が個人的な実用メモとして利用したり
他者の理解の参考になるようにと作成したものです。
誤字やおかしな情報があれば筆者SNSか記事コメント欄
にコメントいただけたらと思います。
※コメントを許可していない記事もあります

 

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