こんにちは。
今回は添付文書に載っていない医薬品の相互作用について考えたいと思います。
今回は便秘に使う薬で、酸化マグネシウムとセンノシド類についてです。
酸化マグネシウム
塩類下剤に分類される酸化マグネシウムです
酸化マグネシウムは塩類下剤に分類される
酸化マグネシウムは、塩類下剤に分類され、浸透圧を高めることで組織側から腸管内に水分を吸引させ、瀉下作用を持つとされています。
詳細の作用機序
酸化マグネシウムは胃内の塩酸によって塩化マグネシウムとなります。
その後、腸管内で炭酸水素マグネシウムとなります。
これが下剤としての本体です。

酸化マグネシウムとセンノシドの併用について考える際にはアクアポリンまで話を広げなければならないため、アクアポリンについて説明します。
アクアポリン
人には10種類を超える「アクアポリン」と呼ばれる水の担体を持っており、
大腸においてはAQP3が多く発現していると言われています。
そして、AQPは、浸透圧勾配による水の移動に関与する水チャネル1)と言われています。

紹介したこの論文の要点です。
「糞中水分量の変動」と
「大腸内浸透圧あるいは AQP3 発現量の変動」との関係
①浸透圧の変動パターンと、糞中水分の変動パターンは異なる
②また、AQP3の発現パターンと、糞中水分量の時間的変化は一致した
結果的には浸透圧による水の移動もあるとは考えられるが、実際の水の移動はAQPの寄与の方が高い可能性がある1)という結論でした
また、浸透圧の変化もAQPの発現に影響している2)そうです
硫酸マグネシウムによるAQP3発現について
MgSO₄によるAQP3発現増加については、Mg²⁺が重要な役割を担っていることが報告されました1)
※SO₄²⁻は関与していなかったようです。
一応他のマグネシウム塩でも検討はしていたようですが、具体的にどのような塩を対象にしたのかは不明
Mg²⁺のAQP発現に対する詳細機序

Mg²⁺はアデニル酸シクラーゼ活性→PKA活性
→転写因子 cAMP-response element-binding protein (CREB)をリン酸化
→各AQP の転写を促進し,発現量を増加させます1)
1)の文献の懸念材料としては、用いられたのが硫酸マグネシウムというところで、臨床でよく用いられるMgOについて適応してもよいのかという点です。
Mg²⁺がAQPに対する要因とするなら、酸化マグネシウムもそうであると考えられますが、それならそれで、酸化マグネシウムの「胃酸で中和される作用機序」も必要ないような気がします。
それは置いといて、酸化マグネシウムにもAQP3発現を増加させる報告4)もあるので紹介しておきます
酸化マグネシウムによってAQP3発現増加+浸透圧の追加効果で血管から水分を引き込むと考えても良さそうですね筆)
よって水分を多く取らないと脱水になる可能性もあり、代償的に薬効も弱まると考えられます筆)
センノシド
こちらは刺激性下剤です
作用機序
センノシドの大まかな作用機序
大腸に至り、腸内細菌により分解されレインアンスロンに代謝され、このレインアンス ロンが大腸を刺激して蠕動運動を促進する5)
細かな作用機序
センノシドの作用機序を調べた結果、
レインアンスロンがCOX2の発現量と、PGE₂の濃度の上昇に寄与することが明らかにされました。
これによりレインアンスロンがマクロファージを活性化させて、活性化マクロファージがPGE₂分泌させ、これがAQP3の発現を低下させたという可能性6)が考えられています。
また、COX阻害剤をラットに添加すると、センノシドの作用が減弱したという報告6)から、この可能性は十分に考えられるという裏付けになると考えられます。
以前動画でNSAIDsとセンノシドが作用減弱させる可能性があると言ったと思いますが、これが裏付けとなります筆)
大黄は大腸のAQP3の発 現量を減少させることにより、腸管側から血 管側への水の移動を抑制し、瀉下作用を示し ている可能性が示唆された。さらに、この AQP3 の減少は、大黄の主成分センノシド A の活性代謝物レインアンスロンが大腸のマ クロファージを活性化して PGE2 の分泌を亢 進することによって引き起こされることが わかった
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-25860195/25860195seika.pdf
また、このCOX2の発現量と、PGE₂の濃度の上昇についてですが、センノシド単独ではこの作用はみられなかったようです6)
つまり、抗生物質によって腸内細菌が崩壊することはセンノシドの下剤としての効果を弱める可能性があるということです。(関係はありませんが一応補足)
まとめると、センノシド(レインアンスロン)による瀉下作用は、
AQP3の発現を低下させ、水分の吸収を阻害することによるものと考えられます。
つまり、マグネシウムとはちょっと違う意味で水分を多くとらないと薬効は見込めないと考えられますね筆)
まとめ
酸化マグネシウムとセンノシドは、
AQPを対象として、相反する作用があると考えられるため、
併用注意と考えられる筆)
以上です。
わかりにくい所等あればSNSまで飛んできてもらえたらと思います。
1)アクアポリン 3 の機能解析とその発現制御機構の解明
2)硫酸マグネシウムによる腸管アクアポリンの発現変化メカニズムの検討
3)https://www.jstage.jst.go.jp/article/nl2001jsce/2007/124/2007_124_124_4/_pdf
(記事には直接使用していない文献ですが、アクアポリンについて書いてくれています)
筆)筆者の考え
5)プルゼニドIF
6)A new treatment strategy for diarrhea and constipation via intestinal aquaporin
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