高尿酸血症は動脈硬化のリスク因子にも挙げられていますが、痛風発作にまでなると痛みが強力なのと、
腎機能にも影響を及ぼす場合もあるため、治療(できるなら)するに越したことはありません。

成人男性では約2割に尿酸値異常が見られるとされてます。

国家試験にもでそうな(出た)箇所は赤マーカーを引いています。

高尿酸血症 | 概要

高尿酸血症自体は自覚症状はないとされています。
高尿酸血症の原因としては核酸代謝関連酵素異常や、尿酸トランスポーターの機能低下型遺伝子変異等の遺伝子変異が考えられています。

また、食事や飲酒,運動等の生活習慣も発症要因として強力に関与する1)とも言われています。

高尿酸血症の定義は尿酸の溶解度に基づいて決められており、血清尿酸値が7.0mg/dL以上とされています。

痛風とは,激痛を伴う急性関節炎発作を主症状とした症候群のことを言います3)

成因

殆どが原因不明の原発性高尿酸血症です。
尿酸は核酸の一種であるプリン体の代謝最終産物で、尿中に排泄されます

健常者の生体内では1200mgほどの尿酸プールが存在する3)とされています。

体内での尿酸産生量は約600mg/dayで、これと同じくらいの量の尿酸が大概に排泄されることで体内の尿酸量バランスを保っています。

二次性高尿酸血症では利尿薬,抗結核薬,免疫抑制薬(シクロスポリンやタクロリムス)が原因薬剤となることがあります。


臨床・生化学的特徴

高尿酸血症は

尿酸排泄過剰型(尿中尿酸排泄量EUA>0.51mg/kg/hr)

尿酸排泄低下型(尿酸クリアランス<6.2mL/min)

混合型(上記両方を満たす)

に大別されます。

頻度としては、尿酸排泄低下型が全体の約60%を占めています。

症状

痛風急性期の痛風関節炎では足の親指のつけね,手の指,肘や膝が腫れて急激に痛みが現れることが特徴です。
また、片側の第一中足趾節関節に多いのも特徴です。

痛風

痛風は、結晶尿産濃度の上昇に伴う尿酸結晶が組織に蓄積することによって起こる代謝性疾患です。
ビール等のアルコール飲料や内臓等のプリン体豊富な食物の大量摂取との関連性が指摘されています。

細胞毒性薬の投与後における細胞の代謝回転の増加や尿酸の排泄障害も原因となることがあります。痛風は間接の滑膜組織(足の親指等)や外耳に沈殿しやすいです。
これらの部位は比較的冷たく,結晶が沈殿しやすいためとされています2)
痛風はプリン体代謝物の尿酸結晶が沈着することによって起こり,非常に強力な痛みを伴う間欠的発作を特徴とします。炎症反応の惹起されてキニン,補体,プラスミン系の活性化が関与し,プロスタグランジン,ロイコトリエンB4のようなリポキシゲナーゼによって代謝される産物,好中球性顆粒球の局所的蓄積が関与する2)ともされています。

また、高尿酸血症は尿酸ナトリウムの結晶が析出することによる

関節の激痛の繰り返し

関節と皮下組織におけるトーフスと呼ばれる皮下結節(痛風結節)の形成

腎結石

痛風腎症

などを起こす症候群です。

最近,一般集団および慢性腎臓病(CKD)の両者において,高尿酸血症と腎障害とは密接な関連を有していることが示されてきている。以下にそのエビデンスを示す。 

https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0052/G0000210/0012
(1)集団健診に参加した6,403人(男性4,222人,女性2,181人)を2年間観察した結果,血清尿酸値は血清クレアチニン高値(男性≧1.4mg/dL,女性≧1.2mg/dL)への進展と正の相関を示していた。血清尿酸値が8.0mg/dL以上の集団の相対危険度は,血清尿酸値5.0mg/dL未満と比較して,男性では2.9(1.8〜4.8),女性では10.4(1.9〜56.6)であった1)
(2)5,808人を用いたコホート研究において,血清尿酸値が高いほど推定糸球体濾過量(GFR)60mL/分/1.73m²未満の割合が高く,また血清尿酸値のレベルと腎機能低下の進行とは有意に関連していた2)
(3)1万3,338人を用いた8.5±0.9年間のコホート研究において,各種因子の補正後においても血清尿酸値は腎臓病の発症リスクと関連していた(血清尿酸値1.0mg/dL上昇あたりのオッズ比は,GFR低下の観点でも血清クレアチニン値上昇の観点でも1.1であった3))。
(4)集団健診の受診者4万8,177人(男性2万2,949人,女性2万5,228人)を8年間観察した結果,女性において高尿酸血症(血清尿酸値≧6.0mg/dL)は末期腎不全(end-stage renal disease ; ESRD)の独立した予測因子であった(補正ハザード比5.8,p=0.0002)。しかし男性では,高尿酸血症(血清尿酸値≧7.0mg/dL)はESRDの独立した予測因子とはいえなかった4)
(5)4万9,413人の日本人男性を用いた平均5.4年の観察において,高尿酸血症(血清尿酸値≧8.5mg/dL)は血清尿酸値5.0〜6.4mg/dLと比較して腎不全の相対危険度(年齢補正相対危険度8.5,p<0.01)と強く関係していた5)
(6)高尿酸血症(血清尿酸値≧7.0mg/dL)はIgA腎症の腎機能予後に関する危険因子である6)
(7)高中性脂肪血症と高尿酸血症(血清尿酸値:男性> 7.6mg/dL,女性> 5.5mg/dL)はIgA腎症進行の危険因子である7)
(8)CKDと痛風を併せもつ症例の体内鉛蓄積は,CKDだけの症例より多かった。さらにCKDと痛風を併せもつ症例に対して,キレート治療により体内鉛蓄積を減少させると尿酸クリアランスは著明に改善した。また,慢性の低レベル環境鉛蓄積は,CKD患者の尿酸排泄を阻害していることが示唆された8)
https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0052/G0000210/0012
https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0052/G0000210/0013

尿路結石に関するリスク

尿路結石の危険因子は尿量低下,高尿酸血症,酸性尿とされています。

ここで、注意しないといけないのは尿路結石には,持続する酸性尿が最も危険な因子だということです。
この状態だと尿酸排泄促進薬が尿路結石の要因になることもあります。

また、高尿酸血症や痛風に合併する尿路結石は,尿酸結石だけではなく,尿路結石で最も頻度が高いシュウ酸カルシウム結石もあるとされています。
(https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001086/4/Clinical_Practice_Guidelines_of_Hyperuricemia_and_Gout.pdf)

治療薬は3つのタイプがある

高尿酸血症の治療目的は尿酸塩が沈着することを防いで,関節や腎臓への影響を抑えることです。

処方される薬のパターンは大まかに3種類あります。

痛みを抑える薬

尿酸値を下げる薬

尿をアルカリ性に傾ける薬

細かく言えばちょっと分類が増えますが、大まかに言えば3種類って感じです。

高尿酸血症の治療目標

高尿酸血症の治療目標は

痛風関節炎の発症や尿酸沈着による腎障害,尿路結石の発症進展の防止3)です。

治療の目標値は血清尿酸値6mg/dL以下です。

治療開始の検討は通常は血清尿酸値が8mg/dL以上です。

臨床においてはまず痛風関節炎に対する治療を行い、十分に鎮静した後に尿酸降下薬を選択します。

薬物療法

状態や腎機能等に合わせて薬を考えていきます。

痛風関節炎

痛風関節炎は痛みが強く、短期間とはいえQOLがかなり低下するため痛みの除去が治療の目的です。

未治療例の痛風関節炎では
まずNSAIDsで発作を抑えることから開始します。
尿d参考火薬は関節炎が治まって2週間ほど経過してから少量から開始します。

発作時の尿酸値の変動は関節炎を悪化させる可能性があるので尿酸降下薬の投与量は変えません5)

痛風関節炎の前兆期

前兆期ではコルヒチンの投与を考えます

コルヒチンの使い方

発作時やその他で使い分けます。

発作時

発作時にはコルヒチンを1回1錠を投与して疼痛発作が寛解するか,胃腸障害の副作用が生じるまでは3~4時間ごとに投与します。
1日量は6~8錠4)

発作予防

発作予防では1日に1~2錠を投与します

発作予感

発作予感(ムズムズする,熱っぽい,腫れぼったい)では1回1錠を投与します4)

痛風関節炎の極期

NSAIDsやステロイド薬を投与して、炎症を沈静化させます。
発作時に尿酸を変動させるのは良くないので、発作時に新たに薬を開始はしません。

間欠期(無症状)

尿酸酸性過剰型に対しては、尿酸生成抑制薬(アロプリノールやフェブキソスタット等)

尿酸排泄低下型については尿酸排泄促進薬(プロベネシドやブコローム,ベンズブロマロン)を投与します。

尿路の管理については尿のアルカリ化薬を投与します。

補足

過食や高プリン・高脂肪・高タンパク食嗜好,常習飲酒や運動不足のような生活習慣は高尿酸血症の原因になります。これらは他にも肥満や高血圧、糖脂質代謝異常にも深く関わるため改善の説明等をしてあげるとベターでしょう。

尿路結石の予防について

高尿酸血症では,酸性尿(pH6.0未満)の頻度が高いので尿路結石の合併率が高いとされています。
これを防止するためには、

水分摂取による尿量の増加(尿酸排泄促進薬服用中は尿量が約2L以上になるくらいが目安)

尿をアルカリ化する(尿のアルカリ化)

が重要とされています。


1)https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0052/G0000210
2)ラングデール薬理学原書第8版
3)薬物治療学改訂9版
4)処方がわかる臨床薬理学 2018-2019
5)今日の治療指針2019 p758

最後に

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