今回は漢方4つをご紹介します。

牛車腎気丸|防風通聖散|防已黄耆湯|抑肝散

あまり繋がりはないですが、説明していきます。

そのうちうまい具合にまとめると思います。

訂正点等があれば都度更新していくことになるかと思います。
大きな訂正点の場合はその旨記載します

牛車腎気丸

腎陽虚証に用いられます。

下半身の冷え、だるさとむくみがあり
夜間頻尿に悩む人

作用・効果:腎陽虚証 水湿証
下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、 むくみ

構成生薬

地黄・山茱萸・山薬→補腎益精作用
牡丹皮・沢瀉・茯苓→清虚熱作用、利水作用

経皮・附子→温陽散寒作用

牛膝・車前子→補腎作用・利水作用

①+②+③=八味地黄丸(地黄 山茱萸 山薬 牡丹皮 沢瀉 茯苓 経皮 附子)

胃腸障害に注意が必要です

胃腸障害を起こしやすい地黄を含むため、指導時に確認が必要です。

ちなみに「牛車」は、膝+前子を指しています。

腎虚を補う薬

腎に気を送るような薬です

腎とは

先天の気を扱う部分です

また、気には先天の気(腎)と後天の気(脾)があるということを別記事でサラッと書いています→六君子湯 補中益気湯 十全大補湯 大建中湯 簡単に解説

腎虚

この先天的なエネルギーが衰えている状態を腎虚といいます。

腎虚に用いられる典型的な漢方は八味地黄丸牛車腎気丸が挙げられます。

八味地黄丸に牛膝・車前子を加えてしびれ・むくみ症状に対してより効くようにしたものが牛車腎気丸です。

牛車腎気丸はしびれやむくみにも効果があり、糖尿病によく用いられます

八味地黄丸

腎陽虚の改善を目指した漢方です。
六味丸(腎陰虚に対して使用)に経皮と附子(温補腎陽作用→強心鎮痛血管拡張作用)を加えて腎陽虚に対応させています。

身体の基礎代謝を高めて冷えを取るというイメージです。

糖尿病に効くとは…

糖尿病がある程度進行していると(HbA1cに異常があると)腹診をとった際に小腹不仁がみられることがあります。

小腹不仁

これは臍の下の力が抜けていたり、その付近に知覚異常が認められるような状態を指し、これは腎虚のパターンです。

腎虚の所見

全身倦怠感

四肢のしびれ
ほてり 腰痛 夜間頻尿

性欲減退や耳鳴り・毛髪の脱落などがあります。

これらは糖尿病やメタボリック症候群でみられることのある所見です

腎虚についてはこちらにある程度まとめてます→

腎虚がよく起こる疾患は、血管がもろくなる病気(特に生活習慣病やメタボリック症候群等)があるようです。

そのため、糖尿病や高血圧、前立腺肥大等で小腹不仁を伴う人には
牛車腎気丸や八味地黄丸が(漢方としての)適応になります。

牛車腎気丸に当てはまらないパターン

小腹不仁を呈していない糖尿病

糖尿病の初期ではHbA1cの高値が持続しているわけではないので、小腹不仁を呈していない場合があります(腎虚のパターンになっていない)

糖尿病の人に腎虚の人が多い→牛車腎気丸

と、結果論的にそうなることが多いだけであって、

腎虚になっていない人に牛車腎気丸は使う必要がない

ということですね。

糖尿病で、まだ腎虚が出ていない人の場合には、防風通聖散や大柴胡湯を使用します。

糖尿病が進行しすぎた人(体調が異常に悪くなっている人)

牛車腎気丸・八味地黄丸は高齢の方に使うことが多い(胃腸虚弱でも使用する)ですが

胃腸虚弱が強力な場合には飲めません
全身倦怠感や胃腸障害が強力な場合は不適応です。

※地黄が含まれていて、胃もたれが悪化する可能性があると考えるとわかりやすいかと思います。

そこまで進行している場合には、補剤(補中益気湯や十全大補湯)、新陳代謝を高める真武湯を使用するほうが適切です。

のぼせや熱感を感じている人にはあまり使わない方が良い

基本は腎陽虚の改善→温める性質をもつ漢方なので、あまり熱感を感じている方には望ましくないです。指導時要確認です。

六味丸

これは+αです。

六味丸は八味地黄丸から、附子と経皮を取り除いた構成です。

→温める作用が弱くなっている

→腎虚 手足のほてり、便秘傾向のある体質の方に適します。

防風通聖散

実熱証に使用します。

便秘がちで食欲があり、脂肪太り

脾肺実熱証
三焦実熱証

構成生薬

防風・荊芥・麻黄・生姜・薄荷・連翹発汗・解表作用

山梔子・黄芩・石膏・桔梗清熱解毒作用

当帰・川芎・芍薬:活血作用 ※四物湯成分

白朮・滑石:利水作用

大黄・芒硝:瀉下作用

甘草:緩和作用

脾の実熱(消化器系が熱を持っている)により口が乾き、体に熱を溜め込んでいる人。また、肺に実熱も適応としてある→皮膚炎や湿疹にも使用されます。

体に熱を持っている→解表剤で発汗させて熱を除く
他、利水や瀉下作用で体内の毒素を排泄します。また、尿路系の炎症を取り除く滑石や山梔子も含みます。

主薬は大黄と芒硝です。大黄は瀉下作用と消炎作用があり、芒硝は腸内で水分を保って瀉下させる下剤です。

瀉剤です(体内に溜まったものを出す)

瀉剤

溜まった悪いものは体外へ出しましょうという考えに基づきます。
ex:腹満や難治性の湿疹、体内にこもるような熱がある場合、悪いものを体外に出すというようなイメージです。

防風通聖散は瀉剤が複数含まれている

複数含むため、バランス良い瀉剤です。

発表剤麻黄 生姜 荊芥
下剤大黄 芒硝
利水剤朮 滑石

痩せる作用

褐色脂肪細胞を活性化し、痩せる作用があると注目されています。

参考:エビデンスによる漢方の再構築: メタボリックシンドロームに対する防風通聖散の有効性の検討

実際の使用について

難治性の皮膚疾患

高血圧

初期の糖尿病

初期の慢性腎炎

等に使用されます。

瀉剤としての考え方

耳鳴り・聴覚嗅覚障害等がある場合で、体内の悪いものを先に出さないと他の薬が聞きにくいと考えられる場合

→先に防風通聖散を事前に服用して様子を見る

という考え方もあります。

シンプルに下剤として使用することもある

実証の方には使用されることもあります。

芒硝が含まれる

芒硝が含まれるため、塩分を追加で摂取してしまうことになります。
食塩制限の有無や、浮腫などの出現がないかを定期的に確認する必要があります。

滑石が含まれる

鉱物起源であり、アルミニウムを含みますので、併用薬には注意が必要です。

防已黄耆湯

「湿」に対する処方です。

汗かき、水太りで、身体や膝に主だるさを感じる方

気虚風湿証

気虚が基本にあり、体内に風邪と湿邪が侵入した病態。水太り、多汗、重だるさや関節痛、むくみや尿量減少がある状態

気虚湿困証

※気虚湿困:(気虚の病態+湿邪の外を受けて、体の重だるさや白色のおりもの等が起こる)

構成生薬

黄耆・白朮:補気健脾作用
防已   :利水消腫作用
生姜・大棗・甘草:健脾作用

気虚に伴い、消化吸収機能が低下することによる水分の停滞に効果を見込む

主薬は黄耆と白朮。補気により汗かきの症状を抑え、利水作用で過剰な水分を取り除く→むくみ・関節痛を緩和

生姜・大棗・甘草(健脾)が胃腸系の働きを改善させて、水分を巡らせる作用を高める
防已→水分代謝異常を抑える

特徴(このような症状に使用)

色白(水毒の症状)

持ったときに筋肉が柔らかい

溜まった水の症状に使用するのが特徴

変形性膝関節症

リウマチ・関節症

慢性腎炎

多汗症(汗を防ぐ作用より)

使用される症状

浮腫 身体が非常に重だるい

尿量が少ない 汗かき

息切れ

適応体型のイメージとしては、当芍美人の太ったバージョンのイメージです。

気虚+水毒が見られるような人に使用を考えます。

黄耆は汗を止める作用がある

これは身体の表面の状態を良くするという作用があり、汗を止めることで有名です。

→汗かきの方に向いていると言えます。

温めたり冷やしたりという作用は期待できない

水を取り去る作用としては期待できる防已黄耆湯ですが、

原因が別にあって「温めたり冷やしたり」が必要な関節痛もあります。

冷えがあってむくみが取れない場合

防已黄耆湯+修治附子末

→防已黄耆湯加附子

熱があってむくみが取れない場合

防已黄耆湯+越婢加朮湯

越婢加朮湯を用いる際には胃腸の弱い方では要注意です。

参考:現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帳(杉山卓也)

抑肝散

肝のバランスが崩れている人に対する処方です

ストレスを溜め込み、神経が興奮する人(眠れない人)

肝気鬱結証に用います。
(肝の機能が失調していて、抑うつ、イライラ、胸悶ためいき等が起こります)

構成生薬

釣藤鈎+柴胡:平肝作用
白朮・茯苓・肝臓:健脾利水作用
当帰・川芎:補血作用

主薬(釣藤鈎+柴胡)が「鎮静作用で自律神経の興奮を抑えます。(特に釣藤鈎は高転換作用・降圧作用があるそうです)
当帰・川芎は四物湯の一部であり、補血作用があります。健脾小夜で消化吸収を高め、栄養状態を改善させます。

もともとは子供の引きつけ、夜泣きの薬ですが、ストレスのある方によく使用されます。

また、漢方では「肝」が昂ぶると興奮やイライラ、筋肉の緊張が現れると考えられています。

そもそもは子供の多動などにも使用される薬で、認知症患者の異常行動にもしようされることがあります。

母子同服

子供に症状があったとして、母親にも飲ませる薬ということで有名です。

母親がヒステリックな方だと、子供が病気になりやすいという話が有名だそうです。

緊張を緩和する薬

テストで緊張する子供だと、テストの数十分前くらいに飲ませることで緊張が緩和することがあります。

緊張と興奮の両方に効く

バランスをとるというのが正確だと思いますが、

緊張しすぎている場合や、興奮が強い方にも使用されます。

参考:参考:現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帳(杉山卓也)

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