漢方製剤について、基本的なことを記載しました。
題名に予備知識とあるように、この記事は寄り道コラム(暇つぶし)的な位置づけですので、「こんな感じね〜」みたいな反応になることが予想されます。
急ぎの方や目的のある方はこのページは必要ありません
服用方法、薬理発現的な併用の考え方、アレルギーに注意が必要な成分について基本的な考え方をまとめました。
Contents
漢方製剤の基本的知識 | 服用タイミングや併用・アレルギー等
漢方の服用タイミングについて
服用タイミングについての考え方です
服用時間
基本的に作用がおだやかであること→吸収を考慮して食間が良いと言われています
また、食後に服用することで食物成分や併用薬と相互作用(キレート等)が出る可能性があるということも食間服用の理由の一つとされています。
他、胃痛や胸焼けにより食後服用となったり、不眠に用いる場合は就寝前等の可能性
麻黄や細茶は中枢興奮作用成分(エフェドリン,カフェイン)を含む
→就寝前は避けるのが望ましいです。(不眠の原因になることも)
※アルカロイド類は空腹時(胃内pHが低い状態)にはイオン型になりやすい
→吸収が抑えられ、アルカロイドの作用が緩和されます
一方、配糖体については、胃からは吸収されず、腸内細菌によって加水分解された後に吸収されるため
→腸管に早く届くためには空腹時の服用が良いと考えられています。
参考:薬学生のための漢方医薬学改定第2版 p235
他にも、分解産物が吸収されて薬効を発現する等性質上、他の食物と競合しないように単独で空腹時に使用するのが望ましいという考え方もあります。
烏頭 延胡索 黄柏 厚朴 呉茱萸 細辛 蒺䔧子(シツリシ)
辛夷 川骨 細茶 釣藤鈎 半夏 檳榔子 附子 防已 麻黄
木香 蓮肉 等
薬学生のための漢方医薬学改定第2版 p236
併用について
基本的なものを載せていきます。
併用が好ましいもの
併用したほうがいい例を挙げていきます
ステロイドとの併用(柴苓湯や小柴胡湯等)
→ステロイド剤の有効性を高め、また併用によってステロイド剤の減量・副作用の軽減が見込める場合もあります。 1)
抗がん剤との併用(イリノテカンと半夏瀉心湯、柴苓湯)
イリノテカンによる副作用(体重減少、食欲不振、下痢)の軽減に加えて腸管治癒
の目的で半夏瀉心湯や柴苓湯が併用されることがあります 1)
抗がん剤に対する半夏瀉心湯(口内炎軽減)
抗がん剤の副作用(口内炎)軽減の目的で半夏瀉心湯の含嗽用法での使用をすることがあります。
参考:福岡県薬剤師会
オキサリプラチンと牛車腎気丸
牛車腎気丸はオキサリプラチン(FOLFOX療法)の神経毒性の予防・軽減効果があるとされています 1)
十全大補湯
十全大補湯についても数例挙げます
シスプラチンとの併用
シスプラチンの抗腫瘍効果の増強と、腎毒性を含む各副作用を軽減するとされています 1)
エリスロポエチンとの併用
エリスロポエチンの効きが悪い患者にたいして十全大補湯を併用することで貧血症状を改善の助けとなることがあるとされているようです1)
麻黄湯とオセルタミビル
麻黄湯にはインフルエンザの症状軽減効果を示し、オセルタミビルと併用することで発熱時間を短縮ができるとされています1)
ドネペジルと加味温胆湯
ドネペジルに加味温胆湯を併用することで、認知機能が改善するとされています1)
六君子湯
抗うつ薬(SSRIやSNRI)の消化器系副作用の軽減目的で六君子湯を使用することがあります。
5-HT₂R阻害によるグレリン産生促進作用が関与しているとのことです1)
好ましくない併用
あまり好ましくない併用例についてです
効果の減弱
減弱例です
(ex.葛根湯とカロナール)
葛根湯は体温を高め、発汗により感冒症状を改善する薬剤に対して
カロナールは体温を加工させる薬です。
→相反する作用をもつもの同士の組み合わせ
抗菌薬や生菌製剤
漢方薬の配糖体成分は腸内細菌による代謝を受けて吸収されるため、
腸内細菌叢を変化させる薬物(特に抗生物質)によって薬効が変わることがあります。
抗生物質によるワルファリンの作用増強もこれと同様な機序です。
(参考;ピロリ菌)
抗炎症薬と大黄
大黄の瀉下作用はPGF₂α生成による炎症作用が作用の本体であるため、抗炎症薬(COX阻害)により作用を減弱させることがあります。
アレルギーについて
アレルギーについて具体的なものを挙げていきます
食物名 | 生薬名 | 処方例 |
アンズ | 杏仁 | 神秘湯 麻安甘石湯 |
かき(貝) | 牡蛎 | 安中散 桂枝加竜骨牡蛎湯 柴胡加竜骨牡蛎湯 柴胡桂枝乾姜湯 |
かき(果物) | 柿蒂 | 柿蒂湯 |
ごま | 胡麻 | 消風散 紫雲膏 神仙太乙膏 他軟膏 硬膏リニメント剤の基剤 |
小麦 | 小麦 | 甘麦大棗湯 |
米 | 膠飴 粳米 | 大建中湯 小建中湯 黄耆建中湯:膠飴 麦門冬湯 附子粳米湯 白虎湯 桃花湯 竹葉石膏湯 |
シソ | 蘇葉 (紫蘇陽 | 半夏厚朴湯 神秘湯 等 |
シナモン | 桂皮 | 桂枝茯苓丸 小建中湯 十全大補湯等 |
ゼリー | 阿膠 | 芎帰膠艾湯 温経湯 黄連阿膠湯 |
乳 | 乳糖 | 賦形剤として多くの漢方製剤に配合 (残存量はごくわずか) |
とうもろこし | 添加物 | エキス製剤の賦形剤 |
ハトムギ | 薏苡仁 | 薏苡仁湯等 |
ビワ | 枇杷葉 | 辛夷清肺湯 |
ベニバナ | 紅花 | 治頭瘡一方 |
みかん | 陳皮 | 香蘇散 補中益気湯 六君子湯等 |
メントール | 薄荷 | 加味逍遥散 荊芥連翹湯等 |
桃 | 桃仁 | 桃核承気湯 潤腸湯 大黄牡丹皮湯 桂枝茯苓丸 等 |
山芋 | 山薬 | 牛車腎気丸 八味地黄丸等 |
ヨモギ | 艾葉 | 芎帰膠艾湯 等 |
漢方服薬指導Q&A
薬学生のための漢方医薬学を参考に作成
参考
1):薬学生のための漢方医薬学
簡単に具体例を挙げていったような記事です。
勉強というよりは、暇つぶし・簡単なコラムとしての位置づけですね。
以上です