肝硬変や肝炎の主な治療方針等、簡易的に記載しました。

復習等に利用してもらえたらと思います。

肝硬変診断
https://www.jsge.or.jp/files/uploads/kankohen2_re.pdf#view=FitVより
肝硬変診断フローチャート
https://www.jsge.or.jp/files/uploads/kankohen2_re.pdf#view=FitVより
腹水診断フローチャート
https://www.jsge.or.jp/files/uploads/kankohen2_re.pdf#view=FitVより
腹水治療フローチャート
https://www.jsge.or.jp/files/uploads/kankohen2_re.pdf#view=FitV
腹水治療フローチャート

先に治療のイメージを記載すると,

1.小〜中度の腹水にはスピロノラクトン投与が第一選択

2.使ってみて弱い場合にはフロセミドを併用

3.そして効かなかったり量が多い場合には薬物治療としてはトルバプタンを追加
(※腹水にはトルバプタンを早期投与すると今日の処方2019に記載ありました)

他の選択肢としてカンレノ酸&利尿薬という感じです。

程度の分類

肝機能の評価としてチャイルドビュー分類が利用されています。

肝機能をあらわすChild-Pugh分類(チャイルド–ピュー分類)が用いられています(表1)。この5項目の点数がすべて1点なら合計5点、すべて3点なら合計15点になりますが、5~6点をChild-Pugh分類A、7~9点をChild-Pugh分類B、10~15点をChild-Pugh分類Cと分類します。

http://www.kanen.ncgm.go.jp/cont/010/kankouhen.htmlより引用
判定基準 1点 2点 3点
アルブミン(g/dL) 3.5超 2.8以上3.5未満 2.8未満
ビリルビン(mg/dL) 2.0未満 2.0以上3.0以下 3.0超
腹水 なし 軽度 コントロール可能 中等度以上 コントロール困難
肝性脳症(度) なし 1~2 3~4
プロトロンビン時間
(秒、延長)
(%)
4未満
70超
4以上6以下
40以上70以下
6超
40未満
http://www.kanen.ncgm.go.jp/cont/010/kankouhen.htmlより引用

肝硬変とは

肝硬変とは慢性肝疾患の終末期で,肝細胞の破壊と再生のほか

線維化による再生結節を特徴とする疾患です。

肝硬変の原因の8割はHBVとHCVによるウイルス性とされています。

症状

代償期では倦怠感や食欲不振

非代償期では腹部膨満感やかゆみを感じることがあります。

所見としては

浮腫

脾腫

腹水

血中アンモニア上昇

PT延長

汎血小板減少

等があります。

原因

原因としては

ウイルス感染
アルコール過剰
肥満
インスリン抵抗性
自己免疫性
遺伝性
薬剤性等があります。

症状・病態

門脈圧亢進(→脾腫→汎血球減少)

ホルモン代謝異常(細胞レベルの低下)

腹水(門脈圧亢進、血清アルブミン低下等により)

肝性脳症(本来なら肝臓で解毒されていた有害物質が解毒できずに血液脳関門を通過)
肺・腎・心障害
血清ナトリウム低値(RAS経路等のホルモンバランスの異常)

肝硬変の合併症

肝細胞癌や食道静脈瘤,腹水・浮腫,細菌性腹膜炎,肝性脳症などがあります。

浮腫

肝硬変による肝リンパ生成

レニンアンギオテンシンアルドステロン系の亢進

門脈圧の亢進

低アルブミン血症等によって腹水や突発性細菌性腹膜炎も発症するとされています。

肝性脳症

肝臓のアンモニア処理能力低下が原因です。

ラクツロースや分岐鎖アミノ酸製剤,抗菌薬で治療されます。

補足

肝炎

急性肝炎はウイルス性(A~E型)の他、アルコールや自己免疫性,薬剤性等があります。

慢性肝炎は肝炎ウイルスの持続感染が原因となります。

B型肝炎

B型肝炎ウイルス本体の肝臓に対する毒性は弱いですが、それに対する免疫応答が細胞障害の原因になります。

B型肝炎において症状が強力な場合にはステロイド(初回でプレドニン40mg程度)が使用されることがありますが、B型肝炎ウイルスが悪さしにくいと考えるとイメージしやすいのではないでしょうか。

病期

病期は4期に分類されます。

免疫寛容期

出産時・乳幼児期にHBV感染した当初は免疫寛容期(HBe抗原陽性,ALT正常の無症候キャリア状態)が続きます。

これはその感染者の免疫が弱いことに起因します。

免疫応答期

10~30代になると免疫が発達して急性肝炎を発症します。

数年の経過でほとんどがセロコンバージョン(HBe抗原陰性,HBe抗体陽性化)します。

もし感染が続いた場合には肝障害が悪化してきます

低増殖期

発症した患者の殆どはHBe抗原のセロコンバージョン(HBe抗原からHBe抗体への変化)が起こります。
これが起こるとウイルスの活動が弱まり、無症候性キャリアとなります。

寛解期

セロコンバージョンの後,HBs抗原が消失した後にHBs抗体が出現して寛解に至ります。

B型肝炎関連抗原

HBV関連抗原には

表面の殻の蛋白(HBs抗原)

内部の核にある蛋白(HBc抗原)

増殖時に放出される蛋白(HBe抗原)

がありますが,これらの抗原性は異なっており,抗体はそれぞれに対応した抗体が産生されます。

HBs抗原,HBe抗原が陽性の場合はHBVに感染していることを示しています。

イメージとしては

HBs抗原は外側のためHBVが存在していればHBs抗原が検出される

HBc抗原,HBe抗原は両方とも内側に存在しているため、増殖したときに検出できるというイメージです。

また、実際に検出するのはHBc抗原ではなくHBe抗原を利用しているようです。

というのも、ガイドライン(https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/B_v3.4.pdf)において「HBc抗原を検出する」というような記載内容は見つけられませんでした。

C型肝炎

HCVの感染は,約7割程度の症例において慢性肝炎に移行します。

自然治癒はほぼしないとされ,2割以上は数十年後に肝硬変へ進展して年率約8%で肝癌を発症するとされています。

いくつか型があり、これはインターフェロンの効きやすさに影響します。

セロタイプ ゲノタイプ 日本人の頻度 インターフェロンの効きやすさ
グループ1 1a
1b
少ない
7割〜程度
効きにくい
グループ2 2a
2b
1~2割
10%以下
効きやすい
改訂9版薬物治療学より

治療

HBV肝硬変

エンテカビル
テノホビル
を第一選択として考慮

核酸アナログが第一選択です。

静脈瘤

一時出血予防として

β遮断薬
特にプロプラノロール

再出血予防として

プロプラノロールとイソソルビドの併用が推奨

利尿薬として

抗アルドステロン薬が第一選択。

https://www.jsge.or.jp/files/uploads/kankohen2_re.pdf#view=FitV

腹水が少〜中等量

スピロノラクトン25~100mg
+フロセミド~80mgを内服

大量or効かない

入院措置。食塩制限(5~7g/day)を行う

その上で、トルバプタン~7.5mg/dayを追加投与

他の選択肢としてはカンレノ酸,アルブミン製剤の投与を考慮する

肝不全

肝不全の際には亜鉛とカルニチンの欠乏が病態を修飾するため

酢酸亜鉛・エルカルニチンも肝性脳症に使用されるようになりました。

分岐鎖アミノ酸製剤について

2015年ガイドラインによると

分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤は低アルブミン血症,脳症,QOLの改善において有効とされています。

血清アルブミン値が低値(3.5g/dL以下)においては有意に改善していると言及されていますが、

そこまで悪くない人(3.5以上)においてはアルブミンの上昇効果は見込めなかったようです。

また、Child分類に置いてChildAにおいては

食事療法に比較して合併症(特に腹水)の発症は少なかったとされています。(脳症・静脈瘤出血に対しては不明)

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