生菌製剤について,使い分けが気になるという方いらっしゃるかと思います。
本記事は基本的に一般人向けの説明とはなりますが,
整腸薬(特に乳酸菌製剤)の位置づけ,
考え方について記載しました。
根拠を書きながら私の考えを記す形となりますので,
参考にしていただけたらと思います。
Contents
生菌製剤の使い分け
結論から言えば,整腸薬(生菌製剤)の使い分けはありません。
感覚的なもので,「使ってみて症状が改善したかどうか」
→結果論となります。
ただ,市販薬の場合には納豆菌が含まれているものがあり,
この場合についてはワーファリン等の飲み合わせを考える必要があり,
除外考慮的な使い分けは存在すると考えられます。
また,納豆菌自体は芽胞菌と言われており
胃酸でも死滅しない善玉菌であること,
ビタミンKを産生するというメリットがありますので
併用薬に該当しないのであれば積極的な使用はメリットはあると考えられます。
使い分けがない理由
腸内細菌叢の組成(構成)は個人差があり,
また食習慣によっても変動するため,
腸内細菌叢の状態・組成は傾向はあるものの同一個人間であっても変動しうります。
そのような状態で生菌製剤の組成を考えたところで,
何の意味もありません。
投与のタイミング(日付や前日の食事も含めて)が違うなら
そのタイミングによって腸内細菌叢は同じではないと考えられます。
私が,生菌製剤の使い分けを考えても意味がなく,
結果論になるという根拠はそこにあります。
生菌製剤の位置づけ
生菌製剤と呼ばれる乳酸菌等の製品の位置づけとしては,
直接症状を改善するというよりも,腸内環境バランスを改善して
腸の機能を正常に近づけるという使い方になります。
腸内に有害な菌が存在したとしても,
全体として腸内細菌のバランスがとれていれば有害とはなりません。
バランスが崩れると腸内に悪さをする菌が増殖して,
有害物質をたくさん産生します。
その結果,下痢や便秘等の症状を引き起こします。
善玉菌の製品は,腸内で有機酸(乳酸や酪酸)を作り
有害菌の増殖を抑えて,腸内細菌のバランスを整えることで
下痢や便秘等の症状を改善するというものです。
そのため,劇的に変化するというよりは
ゆるやかに改善していくというイメージの方が良いでしょう。
生菌製剤に含まれる成分
善玉菌として使用される善玉菌成分としては
ビフィズス菌
フェーカリス菌
アシドフィルス菌
ラクトミン(生菌成分+賦形剤)
宮入菌
納豆菌
等があります。
これらの菌は糖を発酵させることにより,
有機酸を生成して腸内のpHを産生に傾かせます。
その結果として腸内容物の腐敗防止や
悪玉菌の増殖を抑えたりする効果が期待できるとされています。
代表的な生菌成分
ビフィズス菌
ビフィドバクテリウム属を指して説明します。
腸内で糖を発酵させて有機酸を生成する善玉菌で,
偏性嫌気性細菌
ビフィズス菌には沢山の種類があります
乳酸菌
乳酸を生成する善玉菌
通性嫌気性
ラクトバチルスとラクトコッカス等があります
ラクトバチルス
アシドフィルス菌
カゼイ菌
ガゼリ菌等が該当します
ラクトコッカス
フェーカリス菌
ラクチス等の種類がいます
酪酸菌
酪酸を産生する菌
クリストリジウム・ブチリカム等があります
酪酸は大腸の細胞の代謝を促して酸素を消費させますので
偏性嫌気性細菌(ビフィズス菌)が生息しやすい環境をつくることになります。
宮入菌は酪酸菌の一種で,芽胞を形成するために
胃酸にも強い生菌
抗生物質にも耐性を持ちうる
という特徴があります。
糖化菌
糖化作用をもつ筋の総称です。
炭水化物から糖を作るため,善玉菌の増殖を補助すると考えられます。
納豆菌
糖化菌の一種です。
ワルファリンの作用を弱めるために
併用薬によっては自己判断で服用することが危険な理由となる菌です。
ワルファリンを飲んでいるなら
事前に薬局または医師に相談しましょう。
生菌製剤を飲むときは食後が望ましい
乳酸菌などの製品を飲む際には,
タイミングとして食後が望ましいです。
多くの乳酸菌は胃酸に弱いため,
強酸(pH1~2)下では死滅する可能性があります。
しかし食後の胃内pHは4~5となっており,
その状況下では乳酸菌は死滅しないと考えられるため
その分腸に生きたまま届くことになりますので
より効果的だと考えられます。
制酸作用のある成分
沈降炭酸カルシウムやリン酸水素カルシウム等の
カルシウム含有成分は
無機塩類の持つ制酸作用を持つため,
胃酸から生菌成分を守るために配合されることがあります。
カルシウムは耐用上限量が設定されているため,
腎臓病の方や,カルシウム製剤を飲まれている方は注意が必要です。
具体的には動悸や悪心等に気を払いましょう。
消化酵素成分
消化を補助する目的で配合されることがあります。
名前に「〜ゼ」という文字で終わることが多いというのが特徴です。
カルニチン
整腸薬に配合される場合は,
胃腸の活動を促進することでもたれ感等を改善する目的で
配合されることが多いとされています。
ジメチルポリシロキサン
お腹のガスを取り除く成分で,
お腹の張りを改善する目的で配合されることが多いです。
生薬成分
ケツメイシ
エビスグサ又はアッカシアトーラと呼ばれる植物の種子です。
消炎作用・緩下作用・利尿作用があります。
便秘に使用される際には,体に熱がこもっており,
腸の水分が足りない場合に使用されます。
要は,腸を潤すイメージです。
用途としては
整腸薬としての使用
弱い下剤として使用されることがあります。
アセンヤク
ガンビールと呼ばれる植物から取っています。
整腸剤として使用する場合は,
小腸の動きを抑える作用がありますので
下痢止めとして使用されると考えられます。
用途としては,整腸作用・下痢止めとして配合されることが多いです。
ゲンノショウコ
腸の調子を整える目的で配合され,
下痢止めや便秘を改善する目的で使用されます。
桂皮・桂枝
熱を取り除く作用があり,解熱や痙攣を抑える作用があります。
(ここでは腸の痙攣を抑えるものとして取り上げてます)
胃腸薬に含まれる際には
胃の働きを活発にする目的で配合されることが多いです。
ウイキョウ
胃を温めることにより活動を正常化させるイメージです。
腸内のガスを除去したり,胃の働きを活発にする目的で
配合されることが多いです。
整腸薬は個人差が大きい
先程もお伝えしたように,
腸内環境というものは個人差が大きいので
整腸薬の効き目も個人差があります。
2週間程度使用しても改善が見られない場合は
薬を変えてみるか,医療機関の受診を考えましょう。
受診の目安
一時的な体の不調に対して市販薬等で改善を目指すのも大切ですが,
市販薬では対応できない場合もあります。
そういう場合には医療機関を受診するしかないので
(そういう場合は早いほうが良い)
ダメだと思ったら早めに医療機関を受診しましょう。
確実に受診した方が良い目安
下痢や便秘を繰り返す場合
吐き気や嘔吐の症状がある場合
発熱を伴う下痢
日常の排便回数よりも4回以上の排便回数の増加があり,それが続く場合
便に血が混じっている場合
いかがでしたか?
今回は生菌製剤の使い分けはなくて,
また効果についても結果論というお話をさせていただきました。
別の記事ではオススメの生菌製剤を紹介しているので,
良かったら御覧ください
参考
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1988/98/12/98_12_830/_pdf
https://www.eiken.co.jp/uploads/modern_media/literature/P21-25.pdf
https://www.eiken.co.jp/uploads/modern_media/literature/MM1410_03.pdf
http://byoin.city.fuji.shizuoka.jp/bumon/regimen/documents/ctcae-ver5_s.pdf
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