小児の投薬についてです。

細かい内容については、また別で書きます。

薬剤師国家試験でも問われる範囲なので、薬学生も対象の記事となります。

用語の定義とか、用量の計算方法、ADMEの違い等を書いていきます。

小児の薬学管理における成人との違い|胃内pH,腸内細菌,代謝能力等

胃内pH,腸内細菌等の違いを説明していくことになります。

んなもん知っとるわい!って人はブラウザバック推奨

新生児とか乳児とか用語の定義

母子保健法の定義

第六条 この法律において「妊産婦」とは、妊娠中又は出産後一年以内の女子をいう。2 この法律において「乳児」とは、一歳に満たない者をいう。3 この法律において「幼児」とは、満一歳から小学校就学の始期に達するまでの者をいう。4 この法律において「保護者」とは、親権を行う者、未成年後見人その他の者で、乳児又は幼児を現に監護する者をいう。5 この法律において「新生児」とは、出生後二十八日を経過しない乳児をいう。6 この法律において「未熟児」とは、身体の発育が未熟のまま出生した乳児であつて、正常児が出生時に有する諸機能を得るに至るまでのものをいう。

母子保健法より

添付文書とかの記載による定義(大事なのはこっち)

「9.7 小児等」の記載に当たって、新生児、乳児、幼児又は小児とはおお よそ以下を目安とする。ただし、具体的な年齢が明確な場合は「○歳未満」、 「○歳以上、○歳未満」等と併記すること。なお、これ以外の年齢や体重 による区分を用いても差し支えないこと。1新生児とは、出生後 4 週未満の児とする。 2乳児とは、生後 4 週以上、1 歳未満の児とする。 3幼児とは、1 歳以上、7 歳未満の児とする。 4小児とは、7 歳以上、15 歳未満の児とする。

医療用医薬品の添付文書等の記載要領の留意事項について

明確な定義を探してみましたが、法律から取ってきたこれなら大丈夫かなと思います。(意味はほぼ変わらないと思いますが、添付文書に向けて記載されている後者を優先しました。)

新生児

産まれてから4週未満の子新生児といいます

乳児

生後4週〜1歳未満の子乳児といいます。

幼児

1歳〜7歳未満の子供を幼児と定義します。

小児

7歳〜15歳までを小児といいます。

小児科とは言いますが、小児科の小児とは少し定義が違いそうですね。まあここは気にするほどでもないでしょう。

小児の薬物動態や、服薬指導上の注意

小児は体重の変化が大きいのは自明ですが、生活リズム(学校等)や薬物動態も異なります。その例を挙げていきます。
理論的な話なので、全てを実践することは難しいかもしれませんが、

「副作用」や「なぜか効かない」等と言った事例にあたった際の考察力として復習できたらと思います。

①胃酸が弱い4)

3歳頃でほぼ成人くらいのpHにはなりますが、
生まれてから〜1歳くらいまでは胃内pHが中性付近です。
そのため、酸性薬物はイオン型が多くなり、塩基性薬物は分子型が多くなります1)

つまり成人に比べ、塩基性薬物の吸収がよくなる傾向があると考えられます。

また、酸に不安定な薬物の吸収量が上がる可能性も指摘されています4)

酸性薬物・塩基性薬物の溶解度や見分け方の考察はこちらに書いてます
酸性薬物・塩基性薬物

②腸内細菌叢

乳児ボツリヌス症という事実からもイメージがわくかと思いますが、新生児は特に腸内細菌叢がまともに形成されていません2) 

また、実際には1歳になるころには乳児ボツリヌス症が問題ないと言われる2)ことから、その頃にはある程度腸内細菌叢が形成されているものと考えられます。

が、”生後早期(出生後 2 年 まで)の抗生物質の投与が小児の肥満リスクを増加させ る"
"乳幼児期におけ る腸内細菌と宿主間の相互作用は,宿主の生体機能制御 に関わるエピゲノムに影響を与え,個体の体質を決定し ている可能性が示唆されている

とする総説3)もあり、小児領域では安易な抗生物質の投与は避けるべきと考えられます筆) 明確な理由があるなら致し方ないとは思いますけどね。
(抗生物質先生にお願いしましたみたいなことを言う人の説得向けです)

長くなりましたが、腸内細菌が関係する薬剤の使用も考慮しないといけないという話です。

③消化管の動き

新生児の胃内容物排出速度は遅いため、Cmaxは低下、Tmaxは延長しますが、AUCはそこまで変わらないとされています1)4)

④単位体重あたりの水分量が多く、脂肪は少なめ1)4)
(新生児・乳児)

子供ちゃんの肌ってみずみずしいですよね。
体重あたりの水分量は成人60%,新生児は80%,生後3ヶ月で70%1)とされています。

つまり、水溶性薬剤は血中濃度が低くなる傾向があります(分布容積の増大)

逆に脂溶性薬物を新生児・乳児に使用するときは、血中濃度が高くなる傾向があります1)

"水溶性の薬物では,アミノグリコシド系 抗生物質のように,新生児あるいは未熟児などで, 体重当たりの投与量が多めに設定されているものも ある."
という現状もあるよう4)です

添付文書に適正用量は載っているので普段は問題ないですが、添付文書ではなく成人量から換算した場合に考えることがあるのかもしれません筆)

⑤血漿蛋白の濃度が低い
(新生児・乳児期)

新生児については、血漿蛋白の濃度は成人等に比較して低いので、薬物の蛋白結合率は相対的に低くなります4)

実務的には蛋白結合率が高くて、安全域の狭い薬物で影響を考えないといけません。

⑥肝臓の代謝酵素が未発達1)

また、代謝酵素の成熟も異なっていて、例えば3A4の活性はあまりなく、3A7というCYP3Aが発達している傾向があります。4)
大事なのは、成人と比べると発達している代謝酵素が異なり、また肝臓の大きさも違うため、代謝能力にも差があるということです筆)

ただ、腎機能については、生後約1年でほぼ完成、2歳前には成人クラスまでに達するそうです(eGFR)1)

実臨床の初回投与でこれらをアセスメントするのは困難だと思いますが、大事なことなので紹介しています。

用量計算方法

添付文書に記載があればそれに従えば良いですが、記載がない場合にはいろんな計算方法があり、それぞれにメリット、デメリットがあるはずです。今回はそれらの紹介をします。(添付文書に用量載ってるものでも、大まかな投与量の目安の計算には役立ちますので、自分で使えそうなものは覚えておいたほうがいいです。)

大体年齢と体重ってどれくらいなのか

まず、年齢に対する平均的な体重を見ていきましょう

小児体重表
日本小児内分泌学会より少し改変

この赤い丸の部分(平均の群)に注目してください。0歳〜1歳までは曲線の傾きが大きいですが、1歳以降は傾きがほぼ一定です。

つまり、1歳の体重を覚えてしまって、
それ以降は「+1歳ごとに何kgくらいずつ増えるんだな」これでいいんです。

覚える量は極力減らしましょう。

グラフを見ると…1歳の平均の体重は約10kgですね。

そこから、6歳くらいまでの変化の割合取りましょうか。

大体6歳で20kgですね。で、1歳がほぼ10kgなので…

(20-10)/(6-1)=10/5=2

単位はkgなので、1歳あたり2kg増えます。
ということで、体重=【10+2・(年齢-1)】

1歳は10kgで、それ以降は1歳あたり2kgくらいずつ増える

これで覚えるのが吉です。
(厳密には10じゃなくて9.5くらいかもしれませんが、そこはご自由に。)

※8歳以降は体格も発達して、身長も体重もかなりばらつきが大きいはずなので、個別に確認って感じですね。

具体的な計算方法

小児計算式
小児の服薬指導(松本康弘)p29

体重を使用している計算方法

Clark式

体重から投与量を求める計算式です。

一応、本来はポンドで記載されるのですが、使用するにあたってポンドで記載するメリットが全くわからないので、この記事では常用のkg単位に変換してあります。
式の意味を考えると、成人体重を68kgと仮定していることになります筆)

Augsberger-Ⅰ式

体重と体表面積から算出しています。
やってみるとそんなに複雑ではないです

Lenart式

体重と年齢どっちも使ってるので、薬局で計算するときはかなりめんどくさいと思います。
ただ、使用しているパラメータが多いだけに正確な気もします筆)

年齢を使用している計算方法

Augsberger-Ⅱ式

これ、シンプルな上に、年齢だけで計算できるのでオススメです。
処方箋みたら年齢載ってますからね。

ただ、年齢のみを使用しているということは、1歳未満の投与量計算に弱いです。(1歳までは体重の変化が大きいですからね)

1歳以上Augsberger-Ⅱ式1歳未満von Harnack換算というのを使用すると割とカバーできることになります。

von Harnack換算

1歳未満の投与量計算に使用します

画像に換算表が載っていますね?
生後半年までの4パターンは覚える他ないでしょう

Youngの式

名前からして年齢から求めてそうな感じがしますね。

0歳の計算をしようとすると、投与量が0mgになります。

Dilling式

シンプル・イズ・ベスト。
当然0歳の計算はできません。
シンプルすぎて個人的にはあまり使いたくないです筆)

基本はAugsberger-Ⅱ式

1歳以上の場合に使用できます。

Augsberger-I式体重からの換算でしたが、

Augsberger-Ⅱ式年齢から計算します。なので、処方箋みただけで計算できます。そして意外とこの式は覚えやすいです。

[(年齢×4+20)/100]×成人量

1歳未満はvon Harnack換算がいいかも

1歳未満は幅が大きいので、こういう換算になってます。
まずは区分を覚えることからですが…

年齢新生児3ヶ月6ヶ月1歳
換算1/81/61/51/4

1歳から遡ると、分母は4-5-6-8

という、語感的に覚えやすい感じでいけそうな感じはしますが、覚えにくいですかね?

小児科領域での薬の飲ませ方

はい。ここが一番やりたかったことです。

長くなりました。
小児の成長の過程とか、独身である我々にとってはなかなかイメージがつかないというものです。

参考になりそうな資料が日経ドラッグインフォメーションにあったみたいなので、それが載ってる本から引っ張ってきました。

小児 服薬
1)p60:日経ドラッグインフォメーション2016;224:PE1-12より

見えにくいと思うので大事な部分のみテキストで。

誕生〜1歳

哺乳の状態で、スポイトお薬団子を用いて服用してもらいます。

また、この時期は何でも飲み込もうとするので、服用させるのは難しくないようです。

散剤を水で溶かして、それをスポイトの口で少量ずつ(0.5mlくらい)飲ませるのが良いでしょう1)

横抱きよりも縦抱きの方が飲ませやすいようですね。(縦抱きだと、口を空けただけで口から薬が出やすいようです。)

この飲ませ方は1歳半までくらいは通用するようです。

1歳〜

薬を水に溶かして飲める場合は水で飲ませ、それが困難な場合は食品と混合して飲ませます。離乳食に混ぜるということでしょうね。

この時期もスポイトで飲ませる指導でも問題ないです。

離乳食が始まります。また、1歳前にはストロー飲みができるようになっているようですね。

また、この頃から味覚が発達したり、自我が芽生えることにより、服薬を嫌がる頻度があがってくるようです。

また、コップ飲みが可能になります。この頃が最も服薬させるのが難しいようです。

3歳〜

3歳後半になると、言葉の意味もわかるようになるため、話が通じます。

5歳〜

錠剤が飲めるようになります。

飲料とpH

マクロライド系の散剤でよく記載ありません?

本剤は小児が確実に服用できるように主薬の苦味を 防ぐためのコーティングが施してあるので、水又は 牛乳等の中性飲料で速やかに服用すること。 なお、酸性飲料(オレンジジュース、乳酸菌飲料及び スポーツ飲料等)で服用したり、噛んで服用した場 合、また、調剤時につぶした場合には、苦味が発現す ることがあるので、避けることが望ましい。

アジスロマイシン添付文書

駄目なものの一部はわかりましたが、これだけでは

「じゃあ◯◯はどうなんですか?」という質問には答えられません。

ということで、普遍的に使えそうな情報をご紹介しときます。
この後にわかりやすく加工して記載します。

本剤の原薬である本剤水和物は苦味を有するため、本細粒剤では苦味を防ぐ目的でコーティングを施し てある。本剤を中性飲料で服用した場合、飲料中または口腔内でフィルムコート層は溶解しないまま胃 内に到達する。しかし、本剤を酸性飲料と共に服用した場合、一部のフィルムコートが溶解し、その結 果、苦味が発現する可能性がある。その苦味によって小児が服用拒否したり、服薬量が守られない可能 性がある。したがって、確実に服用できるように、水、牛乳またはアイスクリーム等の中性飲料で速や かに服用させる。酸性飲料(オレンジジュース、乳酸菌飲料及びスポーツ飲料等)で服用したり、噛ん で服用した場合、また、調剤時につぶした場合には苦味が発現することがある。

ジスロマック細粒IF

かなり詳しく情報を載せていてくれていたメーカーもあったのでそれも参考にしました。

https://www.info.pmda.go.jp/go/interview/1/270161_6149004C1072_1_011_1F.pdf

酸が駄目なアジスロマイシン細粒で使用不可な飲食物

りんごジュース(pH:3.2)
オレンジジュース(3.3)
乳酸菌飲料(3.9)
スポーツ飲料
ヨーグルト
OS-1(スポーツ飲料の部類に含んでもいいかも?)(3.8)

酸が駄目なアジスロマイシンでも使用可能な飲食物

牛乳(pH6.6)
アイスクリーム(バニラ)
コーヒー牛乳(6.8)
紅茶
ココア(6.7)
カスタードプリン

同様に、クラリスロマイシンDS(酸性飲料☓)を参考にした結果
参考:https://www.info.pmda.go.jp/go/interview/1/400186_6149003F1112_1_022_1F.pdf

可能

牛乳、コンデンスミルク、ココアパウダー、アイスクリーム、砂糖、イチゴジャム、クリーミーパウダー、コーヒー用ミルク、水羊羹、プリン、ピーナッツ クリーム、チョコレートクリーム

不可

フルーツジュース、ヨーグルト、スポーツドリンク

品名苦味の評価(スコアの平均値)n=10
オレンジジュース 10%1.8
牛乳1.0
紅茶1.1
1.1
ウーロン茶1.1
ココア1.1
スポーツドリンク1.7
乳酸菌飲料3.4
チョコレートアイス1.0
バニラアイス1.0
チョコレートクリーム1.1
ピーナッツクリーム1.1
ハチミツ1.1
ガムシロップ1.2
カスタードプリン1.0
ヨーグルト3.8
中性の嚥下補助ゼリー1.2

F1_クラリスロマイシン錠50小児用「MEEK」/クラリスロマイシンDS10%小児用「MEEK」
より引用
 1:苦味の発現が全く認められない 
2:苦味の発現の有無が疑わしい 
              3:明らかに苦味の発現が認められるが、服用には差し支えない 
           4:明らかに苦味の発現が認められ、服用には差し支える

嚥下補助ゼリーについては、フルーツ系の味は避けたほうが良いでしょう(理由はフルーツジュースのpHが低い傾向にあるため)


オレンジジュースは「10%」と書いてあるのが気になるところですね。果汁10%程度ならいけるという事かもしれませんが、やめとくのが無難でしょう。

スポーツ飲料も、なぜかいけるようですが、もしかしたらメーカー感での味付けの違いかもしれません。
筆者としては非推奨です。

やはり酸性が駄目な飲料はフルーツ系ジュースやヨーグルトが駄目な傾向があるようですね。
そもそもドライシロップって甘み付いてるので水で十分なはずではありますが、一応書いときました。

酸が駄目なコーティングをされているものは、基本的にはこれを参考にすれば良いかなと思います。(1歳が絶対飲まないようなものも含んでますが、一応載せました)

酸性飲料になる飲食物まとめ(簡易)

使用不可

アジスロマイシン
りんごジュース(pH:3.2)
オレンジジュース(3.3)
乳酸菌飲料(3.9)
スポーツ飲料
ヨーグルト
OS-1

クラリスロマイシン
フルーツジュース
ヨーグルト
スポーツドリンク
乳酸菌飲料

このことから、ほとんど駄目なものが重複していることがわかるかと思いますので、これらは駄目ということが考えられるでしょう。

使用可

アジスロマイシン

牛乳(pH6.6)
アイスクリーム(バニラ)
コーヒー牛乳(6.8)
紅茶
ココア(6.7)
カスタードプリン

クラリスロマイシン

牛乳
コンデンスミルク
ココアパウダー
アイスクリーム
砂糖
イチゴジャム
クリーミーパウダー
コーヒー用ミルク
水羊羹
プリン
ピーナッツ クリーム
チョコレートクリーム
ハチミツ
ガムシロップ

とりあえずは以上です。正直最後のところがやりたかっただけです。

載せたほうがいい情報や訂正点等あれば右からSNS飛べるのでコメント頂けたらと思います。

1)松本康弘の極める!小児の服薬指導
2)ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから
3)抗生物質による腸内細菌叢の変化と生体影響
4)薬物動態と薬力学

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以上です。

関連記事も含めて色々書いてあるので一番下まで読んで頂けると幸いです

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